司法書士が営業ゼロで売上2倍にした方法|士業の差別化戦略と「川上戦略」の実践

士業ビジネスが抱える根本的な課題とは

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サービスの差別化ができない士業の宿命

士業ビジネスにおいて最も深刻な問題は、サービスの差別化が極めて困難であるという点です。司法書士、行政書士、社労士、税理士など、弁護士を除く多くの士業では、どの事務所に依頼しても最終的な成果物はほぼ同じです。

書類作成や各種手続きの代行というサービスは、やり方を知っていれば誰でもできる業務です。士業資格はその「やり方」を独占的に扱える権利を保証しているに過ぎません。

差別化できない市場で起こる価格競争

サービス内容で差別化できない市場では、必然的に以下のような状況が発生します。

  • 声の大きい事務所(広告宣伝費を投入できる)
  • 最安値を提示する事務所

この2つのタイプが顧客を集めやすくなります。これはあらゆる市場における宿命であり、士業業界では特に顕著に現れている現象です。

営業ゼロで売上2倍を実現した司法書士の戦略

JV(ジョイントベンチャー)による突破口

ある司法書士事務所は、葬儀会社とのJV(ジョイントベンチャー)によって営業活動なしで売上を大幅に伸ばすことに成功しました。このアプローチの核心は「川上戦略」にあります。

「川上に陣取る」という発想の転換

相続手続きの顧客動線を理解する

一般的な相続手続きの流れを考えてみましょう。

  1. 親族が亡くなる
  2. 死亡届の提出
  3. 葬儀の手配・実施
  4. 相続手続きの検討

ほとんどの司法書士は、「4. 相続手続きの検討」の段階で「私がやります!」と手を挙げて競争しています。しかし、顧客の動線を見れば、必ず葬儀が先に来ることがわかります。

川上戦略の具体的な実践方法

葬儀会社と提携することで、以下のような流れが生まれます。

  1. 遺族が葬儀会社に連絡
  2. 葬儀の打ち合わせ中に、葬儀会社のスタッフが「相続手続きのご準備は大丈夫ですか?」と確認
  3. 「提携している司法書士がいます。セットでご依頼いただくと葬儀費用の割引も可能です」と提案
  4. 遺族は渡りに船で依頼を決定

この方法なら、司法書士は営業活動を一切せずに、確実に案件を獲得できます。

なぜ川上戦略が圧倒的に有利なのか

競合が群がる前にポジションを確保

川の流れに例えると、ほとんどの司法書士は川の下流で網を張って待っています。しかし、川上で網を張れば、魚は下流に流れる前にすべて捕まえられます。

第一選択肢になれる優位性

相続手続きは人生で1〜2回しか経験しない出来事です。多くの人は「普段お世話になっている司法書士」を持っていません。そのため、最初に接触した専門家が選ばれやすいのです。

葬儀という必須のプロセスの中で紹介されれば、顧客は改めて探す手間もなく、信頼できる葬儀会社からの紹介という安心感もあって、高確率で依頼につながります。

川上戦略を他の士業・業種に応用する方法

立地戦略における川上思考

川上戦略は店舗ビジネスでも活用されています。

駅前の居酒屋と、駅から徒歩3kmの居酒屋。同じ品質・価格でも、駅前(川上)にある店舗が圧倒的に有利です。顧客が選択を検討する前に、最初に目に入る位置を確保しているからです。

タイミング戦略:ジャパネットのおせち販売事例

ジャパネットたかたは、8月からおせち料理の販売を開始します。

  • 商品内容:他社と変わらない
  • 価格帯:2〜4万円の標準的な価格
  • 差別化要素:販売タイミングが圧倒的に早い

12月になって慌てる競合他社より先に、早期準備派の顧客を総取りしているのです。

川上戦略実践の3つのステップ

ステップ1:顧客の購買プロセスを可視化する

あなたの顧客が、サービスを必要とする前にどのような行動をとるか、時系列で整理しましょう。

ステップ2:競合の接触ポイントを特定する

競合がどのタイミング・どの場所で顧客にアプローチしているか分析します。

ステップ3:それより早い接触ポイントを見つける

競合より前に顧客と接触できる方法を考案し、実行します。

士業が川上戦略で成功するための具体的アイデア

社労士の場合:企業設立支援会社との連携

起業時には法人設立登記が必要です。司法書士や行政書士と連携している企業設立支援会社と提携し、設立直後に社労士サービス(社会保険加入、就業規則作成など)を提案できます。

行政書士の場合:不動産会社との連携

建設業許可、民泊許可、飲食店営業許可など、事業開始時に必要な許認可業務は、不動産仲介会社や物件オーナーとの連携で川上を押さえられます。

税理士の場合:金融機関との提携

融資相談に来た事業者に対して、金融機関から顧問税理士の紹介を受けられる関係を構築すれば、競合が気づく前に顧客を獲得できます。

川上戦略を成功させる5つのポイント

1. Win-Win-Winの関係を設計する

提携先、顧客、自社の三者すべてにメリットがある仕組みを作りましょう。葬儀会社の事例では、葬儀会社は付加価値サービスを提供でき、顧客は手間が省け費用も抑えられ、司法書士は営業不要で案件獲得できています。

2. 提携先のビジネスを深く理解する

提携先がどのように顧客と接点を持ち、どのタイミングでどんな提案ができるか、詳細に把握することが重要です。

3. 顧客にとって自然な流れを作る

「押し売り」と感じさせない、顧客のニーズに沿った提案タイミングを設定しましょう。

4. 提携先にメリットを明確に示す

紹介手数料、相互紹介、共同マーケティングなど、提携先が積極的に動きたくなる仕組みを用意します。

5. 小さく始めて検証・改善する

いきなり大規模展開せず、1〜2社との試験的な提携から始め、うまくいく方法を見つけてから拡大しましょう。

まとめ:差別化できない士業こそ「接触タイミング」で勝負する

コピーライティングやオファーより重要なポジショニング

多くの士業経営者は、広告文章の改善やキャンペーン企画に力を入れます。しかし、競合が網を張る前に自分が網を張れば、そもそも競争する必要がなくなります

川上戦略は破壊的イノベーションを起こす

顧客が「あなたのサービスを必要とする前」に接触する方法を見つけることで、業界の常識を覆すような成果を生み出せます。

今日から始められる川上戦略の第一歩

  1. 顧客の購買プロセスを紙に書き出す
  2. 競合より早く接触できるポイントを3つ考える
  3. そのポイントにいる事業者をリストアップする
  4. 提携提案の資料を作成し、1社にアプローチする

差別化できないからこそ、ポジショニングで勝つ。それが現代の士業経営における最も効果的な戦略です。

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