なぜ多くの士業が「選ばれない」のか?
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税理士、社労士、行政書士、司法書士——これらの士業に共通する最大の悩み、それは「差別化の難しさ」ではないでしょうか。
会社設立を依頼しても、どの税理士に頼んでも結果は同じ。労務相談をしても、どの社労士でも提供できる内容はほぼ変わらない。許認可申請も、どの行政書士に依頼しても同じ書類が完成する。
つまり、お客様から見ると「どこに頼んでも一緒」なのです。
ホームページを見ても、どの事務所も同じようなことを書いています。「丁寧な対応」「迅速なサービス」「豊富な実績」——こうしたフレーズが並ぶだけで、決定的な違いが見えません。
この状況こそが、士業がコモディティ化した典型的な症状です。
コモディティ化が引き起こす「価格競争地獄」
差別化できない市場で何が起きるのか。答えは明確です。
価格競争が始まります。
選ぶ理由がないなら、お客様は「安いところ」を選ぶしかありません。すると、業界全体が値下げ合戦に突入し、どれだけ働いても利益が残らない状況に陥ります。
売れても儲からない。忙しくても疲弊するだけ。誰も幸せにならない——これがコモディティ化したビジネスの末路です。
では、この負のスパイラルからどう抜け出せばいいのでしょうか?
解決策は「ニッチ化」——でも普通のニッチでは不十分
多くの経営者が「ニッチ戦略」という言葉を聞いたことがあるでしょう。確かに、特定の分野に特化することは有効です。
例えば、税理士なら:
- 会社設立に特化
- 会社解散・清算に特化
- 相続税に特化
こうしたジャンル特化は、一見すると効果的に見えます。実際、新しいニッチが生まれた当初は選ばれる理由になります。
しかし、ジャンル特化だけでは限界があります。
例えば、かつて「LINE集客コンサルタント」という肩書きが新鮮だった時代がありました。LINEが普及し始めた頃、この分野に特化した人は大いに注目されました。
ところが、成功事例を見た他のコンサルタントが次々と「LINE集客」を名乗り始め、あっという間にそのニッチ自体がコモディティ化してしまったのです。
「スマホ集客コンサルタント」も同じ道を辿りました。
つまり、ジャンル特化だけでは、すぐに他の人に真似されてしまうのです。
真の差別化を生む「リッチニッチ戦略」とは?
そこで重要になるのが、2軸で考えるニッチ戦略です。
これを「リッチニッチ」と呼びます。儲かるニッチ、という意味です。
リッチニッチの公式は極めてシンプルです:
リッチニッチ = ターゲット × ジャンル
多くの人が「ジャンル」だけでニッチ化しようとしますが、そこに「ターゲット(誰)」を掛け合わせることで、真の差別化が生まれます。
実例:商品を変えずに顧客3倍を達成した税理士の戦略
ある女性税理士の事例を紹介しましょう。
この税理士は、サービス内容を一切変えず、広告費も増やさず、特別なノウハウも使わずに、顧客数を3倍に増やすことに成功しました。
彼女がやったことは、ただ一つ。
「女性起業家(特にセラピスト)」×「会社設立・税務サポート」
というニッチを作っただけです。
- ターゲット:女性起業家(セラピスト)
- ジャンル:会社設立・税務業務
この2つを掛け合わせることで、「女性起業家のための会社設立専門税理士」というポジションを確立しました。
すると何が起きたか?
女性で起業を考えている人、特にセラピストとして独立したい人にとって、「このサービスは私のためにある」と一目で分かるようになったのです。
他の選択肢が見えなくなり、自然と選ばれるようになりました。
2軸ニッチ化の具体的な作り方
では、あなたの事務所でも実践できるよう、具体的な手順を解説します。
ステップ1:2つの軸を書き出す
まず、縦軸と横軸で表を作りましょう。
縦軸(ターゲット):
- 女性起業家
- 男性経営者
- 中小企業
- 外国人起業家
- 副業サラリーマン
- シニア起業家
- IT業界
- 飲食業界
- 医療関係者
横軸(ジャンル/サービス):
税理士の場合:
- 会社設立
- 会社解散・清算
- 帳簿作成代行
- 相続税対策
- 節税コンサル
- 資金調達サポート
社労士の場合:
- 就業規則作成
- 助成金申請
- 労務トラブル対応
- 社会保険手続き
- 人事評価制度構築
行政書士の場合:
- 建設業許可
- 飲食店営業許可
- 在留資格申請
- 遺言書作成
- 車庫証明
ステップ2:掛け合わせる
この2つの軸を組み合わせていきます。
例:
- 「飲食業界」×「助成金申請」→ 飲食店オーナー専門の助成金社労士
- 「外国人起業家」×「会社設立」→ 外国人のための会社設立専門税理士
- 「IT業界」×「就業規則」→ IT企業専門の就業規則作成社労士
- 「医療関係者」×「相続税」→ 医師・歯科医師専門の相続税理士
ステップ3:市場の存在を確認する
ここが最も重要です。
2つを掛け合わせるということは、さらにニッチになるということです。ニッチすぎて市場が存在しない可能性もあります。
例えば、「畳屋で起業したい人」×「会社設立」というニッチを作っても、そもそも今の時代に畳屋で起業する人がどれだけいるでしょうか?
これでは、珍しいだけで売れないニッチになってしまいます。
市場があるかどうかの判断基準:
- その業界・属性の人口は十分か?
- 実際にそのニーズは存在するか?
- 成長市場か、それとも衰退市場か?
- 検索ボリュームはあるか?
- 競合は存在するか(まったくいないのも危険信号)
リッチニッチが機能する3つの理由
なぜ2軸のニッチ化がこれほど効果的なのか、その理由を解説します。
理由1:ターゲットにとって「自分事」になる
「女性起業家のための会社設立」と言われた女性起業家は、「これは私のためのサービスだ」と即座に理解します。
一般的な「会社設立サポートします」では、自分事として捉えられません。
理由2:競合と比較されなくなる
2軸で絞り込むと、同じポジショニングの競合はほとんどいなくなります。
お客様から見て、比較対象がいないということは、価格競争に巻き込まれないということです。
理由3:専門性の証明になる
「〇〇専門」と名乗ることで、その分野での実績や知識が豊富だと認識されます。
実際にサービス内容は変わっていなくても、専門家として選ばれやすくなるのです。
よくある失敗パターンと回避方法
リッチニッチ戦略を実践する際、多くの人が陥る失敗パターンがあります。
失敗パターン1:ターゲットを絞ることへの恐怖
「ターゲットを絞ったら、お客様が減るのでは?」
これは最もよくある誤解です。実際には逆のことが起きます。
万人向けのメッセージは誰にも刺さりません。特定の人に向けたメッセージこそが、強く響くのです。
失敗パターン2:すぐに変更してしまう
ニッチを決めても、すぐに効果が出ないと不安になり、別のニッチに変更してしまう人がいます。
ポジショニングは一貫性が重要です。最低でも6ヶ月は継続しましょう。
失敗パターン3:中途半端なニッチ化
「中小企業向け」「経営者向け」といった、あまりにも広いターゲット設定では意味がありません。
もっと具体的に絞り込む勇気が必要です。
今日から実践できるアクションプラン
最後に、明日から始められる具体的なステップをお伝えします。
アクション1:現在のお客様を分析する
既存のお客様を見直してください。
- 最も利益率の高いお客様は?
- 最も関係性の良いお客様は?
- 共通する業界や属性は?
ここからヒントが見つかります。
アクション2:ホームページのキャッチコピーを変える
今すぐできる最も効果的な方法です。
変更前:「会社設立から税務申告まで、幅広くサポートします」 変更後:「女性起業家のための会社設立専門税理士」
たったこれだけで、反応は大きく変わります。
アクション3:ブログ・SNSで専門性を発信する
選んだニッチに関する情報を継続的に発信しましょう。
「〇〇業界の助成金活用事例」「〇〇向けの節税対策」など、ターゲットが欲しい情報を提供し続けることで、専門家としての地位が確立されます。
アクション4:既存サービスの見せ方を変える
サービス内容を変える必要はありません。見せ方を変えるだけです。
「就業規則作成」→「IT企業のリモートワークに対応した就業規則作成」
このように、ターゲットに合わせた表現にするだけで、反応が変わります。
まとめ:差別化の本質は「選ばれる理由」を作ること
士業のビジネスがコモディティ化している今、商品やサービスの質で差別化することは困難です。
しかし、誰のための何かを明確にするだけで、お客様から見た価値は劇的に変わります。
- ターゲット × ジャンルの2軸で考える
- 市場の存在を確認する
- 一貫性を持って発信し続ける
この3つを実践すれば、価格競争から抜け出し、選ばれる事務所になることができます。
商品を変えずに顧客を3倍にした税理士のように、あなたの事務所も「リッチニッチ戦略」で成長を実現してください。
今日から、あなたの事務所の「リッチニッチ」を見つける作業を始めましょう。






