BtoBマーケティング/価格戦略
「問い合わせ数1.6倍」に成功したBtoBの価格戦略とは
BtoBのサービスを提供している会社であれば、一度は「うちも見積もりが来るまで時間がかかるな」と感じたことがあるのではないでしょうか。実は、BtoB 価格戦略として「価格を先に出す」というだけの工夫で、問い合わせ数が1.6倍に増えた事例があります。今回は、その具体的な中身と、自社で取り入れるためのステップを解説します。
この記事でわかること
- なぜBtoB業界では価格が「見えない」のが当たり前になっているのか
- 価格を先に出すだけで、問い合わせ数が増える理由
- 「要見積もり」が売り手側にとって損をしている3つの理由
- 価格を先出しするための3つのステップ
- 価格を出しにくいサービスでもできる工夫
なぜBtoBは「価格が見えない」のが当たり前なのか
BtoBの取引では、「価格は要見積もり」という表記が一般的です。企業ごとに条件や工数が異なるため、一律の価格を出しにくいという事情は確かにあります。
たとえば動画配信サポートの業界を例に考えてみましょう。「ウェビナーの撮影・配信・編集を手伝ってほしい」という依頼に対して、多くの事業者は「要見積もり」という形で対応します。依頼する側は、実際に問い合わせて見積もりが返ってくるまで、金額感がまったくつかめません。
この「価格が見えない」状態は、事業者側にとっては当たり前の慣習かもしれませんが、依頼する側にとっては、検討を進める上での大きなハードルになっている可能性があります。
価格を先に出しただけで、問い合わせ数が1.6倍に
ある動画配信サポートの事業者は、他社の多くが「要見積もり」としている中で、価格を「1時間5万円」という形で最初から明示することにしました。
すると、依頼を検討する側にはこんな変化が起こります。
「1時間のウェビナーだから、配信・設営・撤収を含めて3時間くらいかかるとすると、だいたい15万円くらいか」
このように、依頼する側がその場で概算の予算感をつかめるようになったのです。「要見積もり」のままだと、いくらかかるか分からないまま検討を進めることになり、他の候補と比較しようがありません。結果として、この事業者では問い合わせ数が1.6倍に増加したそうです。
2025年版の中小企業白書でも、差別化や市場環境を意識した適切な価格設定を行う経営は、業績向上につながる可能性が示唆されています。価格の見せ方は、単なる営業テクニックではなく、経営戦略の一部として捉える価値があるといえるでしょう(出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第1節 経営戦略)。
「要見積もり」が売り手にとって損な3つの理由
検討候補から早々に外れやすい
価格が分からないサービスは、比較検討のリストに入る前の段階で候補から外れてしまうことがあります。依頼する側は、複数の候補を横並びで比較したいものです。
「予算に収まるか分からない不安」が離脱を生む
問い合わせをしても、予算オーバーだったらどうしよう、という不安は、依頼するかどうかを迷わせる大きな要因になります。
比較検討の土俵に乗れない
価格が見えている競合と、価格が見えない自社を、依頼する側が同じ土俵で比較することは難しくなります。土俵に上がることすらできなければ、選ばれる機会も生まれません。
価格を先出しするための3ステップ
提供メニューを「単位」で区切る
まずは、提供しているサービスを「時間単位」「件数単位」など、価格をつけやすい単位に区切ります。すべてをまとめて考えると価格が出しにくくても、単位ごとに分ければ設定しやすくなります。
基本料金を明確に決めて公開する
区切った単位ごとに、基本料金を決めてホームページやパンフレットに明記します。「1時間◯円から」という表現でも、依頼する側にとっては大きな判断材料になります。
オプション・追加費用の考え方を併記する
基本料金だけでは対応できない特殊な依頼もあるはずです。「◯◯が発生する場合は別途お見積もり」といった形で、追加費用の考え方をあらかじめ示しておくと、トラブルを防げます。
価格を出しにくいサービスはどうすればいいか
案件ごとに工数が大きく異なり、本当に価格を一律で出しにくいサービスもあります。その場合は、無理にすべてを一律価格にする必要はありません。
たとえば不動産の仲介であれば「1,000万円の物件なら仲介手数料は◯万円程度」、システム開発であれば「小規模な改修なら◯万円から」というように、代表的なケースを例に、目安となる価格レンジを示すだけでも効果があります。
大切なのは、依頼する側が「まったく想像がつかない」状態を避けることです。J-Net21の価格設定に関する解説でも、原価・需要・競合状況を踏まえて自社に合った価格設定方法を検討することの重要性が紹介されています(出典:J-Net21「価格設定の考え方」)。
価格を先出しする際の注意点
工数が大きく変動するサービスは慎重に
価格を固定してしまうと、想定外に工数がかかる案件で赤字になるおそれがあります。前述のように、目安レンジを示す形からスタートするのが安全です。
極端な安売りに見えないよう価値を併記する
価格だけを前面に出すと、安さだけで比較されてしまうことがあります。価格の近くに、提供内容や強みも合わせて記載しておきましょう。
価格改定時のルールを事前に決めておく
一度公開した価格は、既存の顧客との関係にも影響します。値上げや条件変更を行う際の告知タイミングやルールを、あらかじめ社内で決めておくと安心です。
まとめ:価格は隠すのではなく、武器にする
- BtoBでも価格を先出しすることで、問い合わせ数の増加が期待できる
- 「要見積もり」は、検討候補から外れてしまうリスクをはらんでいる
- まずはサービスを単位で区切り、基本料金を明確にすることが第一歩
- 価格を出しにくい場合でも、目安レンジを示すだけで効果がある
- 導入時は、工数変動のリスクと価値の伝え方のバランスに注意する






