はじめに:ポスティング会社が直面する採用課題
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ポスティング会社を経営されている方なら、誰もが直面する大きな課題—それが「スタッフの確保」です。
ポスティング業務は人手が必要な仕事。しかし、なかなかスタッフが集まらない。100人いても無理をしなければ回らない。無理をすれば体を壊してやめる人が出てしまう。理想は150人のスタッフ体制ですが、その人数を確保し続けるのは至難の業です。
あるポスティング会社を経営していた経営者は、この採用課題に真正面から向き合いました。そして、ある戦略を実行することで、わずかな期間で30人から150人へとスタッフを増やすことに成功したのです。
今回は、その具体的な手法と、シルバー世代を採用する際の重要なポイントを余すことなくお伝えします。
なぜ求人チラシを選んだのか?コスト0円の採用戦略
ポスティング会社ならではの強みを活かす
その経営者が選択した採用手法は、求人チラシでした。
「なぜチラシなのか?」と思われるかもしれません。理由はシンプルです。ポスティング会社を運営しているのですから、チラシの配布コストがかからないのです。
通常の求人広告では、求人サイトへの掲載料、折込チラシの配布料など、様々なコストが発生します。しかし、自社で配布業務を行っているポスティング会社なら、既存のスタッフに一緒に配布してもらえば済む話。つまり、実質コスト0円で求人活動ができるのです。
媒体選択の重要性
もう一つ、チラシという媒体を選んだ理由があります。それは、ターゲット層との相性です。
ポスティングスタッフの大半はシルバー世代。具体的には、7割以上が60歳以上の方々です(そのポスティング会社の場合)。この世代にリーチするには、インターネット求人サイトよりも、手に取って読めるチラシの方が圧倒的に効果的なのです。
従来の求人チラシの問題点:なぜ応募が集まらなかったのか
ありきがちな失敗パターン
多くのポスティング会社が作成する求人チラシは、こんな内容ではないでしょうか?
「60歳以上の方、ポスティングの仕事で小遣い稼ぎしませんか?」 「シルバー世代歓迎!健康のために歩いて稼げます」
一見、悪くない内容に思えます。しかし、この訴求方法ではなかなか応募が集まりませんでした。
直接訴求の限界
問題は、本人に直接訴えかけているという点です。
60歳以上のシルバー世代に「仕事しませんか?」と直接声をかけても、多くの方は「今さら働くのも…」「わざわざチラシを見て応募するのも…」と躊躇してしまいます。
では、どうすれば良いのか?答えは、訴求対象を変えることでした。
革新的アプローチ:「息子・娘世代」に訴えかける戦略
ターゲットシフトの発想
その経営者が実践した方法は、シルバー世代本人ではなく、その子供世代、つまり40代前後の息子・娘に訴えかけるという手法です。
具体的には、こんなチラシを作成しました。
「60歳以上のお父さん・お母さんがいる方へ」 「いつまでも健康でいてもらいたい。そう思っているなら、ポスティングの仕事を紹介してあげてください」
このアプローチの背後には、明確な心理戦略があります。
シルバー世代の最も強い欲求とは?
シルバー世代の方々が深く心に抱いている思い—それは、「自分の子供や孫に迷惑をかけたくない」という強い願望です。
- 金銭面で子供に負担をかけたくない
- 健康面で心配をかけたくない
- 寝たきりになって介護の手間をかけたくない
- ボケて周囲に迷惑をかけたくない
この「迷惑をかけたくない」という思いは、シルバー世代にとって最も強い欲求なのです。
家族からの働きかけの威力
そして重要なのは、実際に自分の息子や娘から勧められたら、動くという点です。
チラシを見た40代の息子・娘は考えます。
「父親、今何もしてないな…このままだとボケたら困るな」 「健康維持のためにも、何か始めてもらった方がいいかも」 「年金だけでは不安そうだし、少しでも稼げる方法があれば…」
そして、親にこう勧めるのです。 「こんな仕事があるみたいだよ。健康にもいいらしいし、やってみたら?」
シルバー世代側の心理変化
親世代は、子供からの提案を受けて考えます。
「息子がわざわざ勧めてくるということは…やっぱりボケられたら困るのかな」 「寝たきりになったら迷惑かけるもんな」 「お金の面でも心配かけたくないな」 「そうか、だったらやってみようかな」
このように、家族という信頼関係を経由することで、応募へのハードルが一気に下がるのです。
シルバー世代採用の4つの強力ポイント
実際にチラシの中で訴求した内容は、シルバー世代の心を動かす4つのポイントでした。これは、今後シルバー世代を採用する際に、どんな業種でも活用できる普遍的な原則です。
ポイント1:健康維持ができる
ポスティングの仕事は歩く仕事です。毎日数千歩、時には1万歩以上歩くこともあります。
「歩くことで健康を維持できる」 「適度な運動になり、体力がつく」 「医者いらずの健康体になれる」
シルバー世代にとって、健康は何よりも大切な資産。健康でいることが、家族に迷惑をかけない第一歩です。
ポイント2:ボケ防止になる
ポスティングの仕事は、意外と頭を使います。
- 配布エリアのルートを考える
- 配布リストを確認する
- 効率的な配り方を工夫する
- 配布枚数を管理する
単純な肉体労働ではなく、頭と体の両方を使う仕事なのです。これが、認知症予防に非常に効果的。「ボケない」ということは、シルバー世代にとって、そして家族にとっても重要な価値です。
ポイント3:同年代の仲間ができる(交流が増える)
多くのシルバー世代が抱える問題の一つが「孤独」です。
ポスティング会社では、同年代のスタッフがたくさん働いています。朝の集合時、休憩時間、業務後など、自然と交流が生まれます。
「同じ年代の仲間ができる」 「話し相手ができる」 「孤独感が解消される」 「新しいコミュニティができる」
人間関係があることで、生活に張りが出て、精神的な健康も維持できます。
参考:【シルバー人材採用の新戦略】ポスティング会社が広告費ゼロで実現!30名→50名へ増やしたコミュニティ採用術
ポイント4:お金が稼げる
もちろん、経済的なメリットも重要です。
年金だけでは生活が厳しい、少しでも余裕が欲しい、子供に金銭的な負担をかけたくない—そんな思いを持つシルバー世代は多くいます。
「自分のお小遣いは自分で稼ぐ」 「子供に頼らず自立した生活ができる」 「少しでも貯金を増やせる」
健康を維持しながら収入を得られる—これは理想的な働き方です。
実践結果:めちゃくちゃ増えました
この戦略を実行した結果、応募者が劇的に増加しました。
30人だったスタッフが、150人まで増員できたのです。しかも、コストはほぼ0円。チラシの印刷代だけで、これだけの採用効果を得られたのです。
応募してきた方々の多くが、「息子(娘)に勧められて」と言っていといいます。まさに、狙い通りの効果が出たのです。
この手法を他の業種・シーンで応用する方法
シルバー世代採用の共通ロジック
今回紹介した手法は、ポスティング会社以外でも応用可能です。
シルバー世代を採用したい業種であれば、この「4つのポイント」と「家族経由の訴求」というロジックは同じように機能します。
応用例:
- 清掃業務:「体を動かして健康維持」
- 軽作業:「頭と手を使ってボケ防止」
- 警備業務:「規則正しい生活でお金が稼げる」
- 配送補助:「同年代の仲間と働ける」
訴求チラシ作成のステップ
- ターゲットを家族世代に設定する
- 本人ではなく、その子供世代を意識する
- 4つのポイントを業務内容に紐づける
- 健康、ボケ防止、交流、収入
- 「迷惑をかけたくない」欲求を刺激する
- 家族への思いやりを想起させる文言を入れる
- 家族から勧めやすい内容にする
- 説得材料となる具体的なメリットを列挙
- 配布エリアを戦略的に選ぶ
- 40代〜50代が多く住む住宅地を中心に配布
まとめ:採用成功の鍵は「視点の転換」
ポスティングスタッフを30人から150人に増やした成功の鍵は、訴求対象を本人から家族にシフトさせたことでした。
重要ポイントの振り返り:
✓ コスト0円で実施できる求人チラシ戦略 ✓ シルバー世代ではなく、その子供世代に訴求する ✓ 「迷惑をかけたくない」という最も強い欲求を活用 ✓ 健康・ボケ防止・交流・収入の4つのポイント ✓ 家族という信頼関係を経由した採用手法
この手法は、単なる採用テクニックではありません。シルバー世代の心理を深く理解し、その方々が本当に求めているものを提供する—そんな本質的なアプローチなのです。
ポスティング会社の採用でお悩みの経営者の方、ぜひこの戦略を試してみてください。きっと、予想以上の効果が得られるはずです。






