中小企業のための価格戦略
ラーメン屋の客単価100円アップ|松竹梅の法則で売れる価格設定
Contents
「値上げすると、お客さんが離れてしまうのでは……」。飲食店や小売店、サービス業を営む経営者なら、誰もが一度は感じたことがある不安ではないでしょうか。実は、価格そのものを大きく変えなくても、松竹梅の法則を使ったメニュー設計だけで、お客様が自然と一番高いメニューを選ぶようになり、客単価が上がる仕組みがあります。今回は、あるラーメン店が「並・大盛・特大」という3段階の価格設定を少し工夫しただけで、特大が一番人気になったという実例をもとに、その仕組みと自店への応用方法を解説します。
この記事でわかること
- 松竹梅の法則で「真ん中」が選ばれやすい理由
- 価格差を縮めるだけで一番高いメニューが売れる仕組み
- 自店ですぐ使える価格設計の4ステップ
- 飲食店以外の業種での応用アイデア
- 導入する際に気をつけたい注意点
なぜ「真ん中」が一番選ばれやすいのか?松竹梅の法則の基本
松竹梅の法則とは
松竹梅の法則とは、価格の異なる3つの選択肢を並べたとき、多くの人が真ん中のプランを選びやすくなるという心理傾向のことです。安すぎると品質が心配になり、高すぎると手が出しにくい。その結果、「ちょうどいい」と感じる真ん中に注文が集中します。松竹梅の3段階に限らず、2段階や4段階のメニューでも同じ現象が起きることが知られています。
実際のラーメン店の事例で見る「真ん中に集中する」心理
今回取り上げるのは、濃厚豚骨ラーメンを提供するあるラーメン店の事例です。もともとのメニュー構成は次のとおりでした。
・並盛:950円
・大盛:1,100円(並盛+150円)
・特大:1,150円(大盛+50円)
このメニュー構成で一番注文されたのは、実は一番高い「特大」でした。松竹梅の法則どおり、多くのお客様はまず真ん中の「大盛」を基準に検討します。そこであと一歩、特大まで手を伸ばしてもらうために使われたのが、次に紹介する価格のトリックです。
ポイント:松竹梅の法則は、価格差そのものより「差の見せ方」が結果を左右します。次の章で、その具体的な仕組みを見ていきましょう。
「特大」が1番人気になった価格トリックの仕組み
通常の価格設定が生む落とし穴
仮に、並盛950円に対して大盛1,050円(+100円)、特大1,150円(+100円)というように、均等に100円ずつ価格を上げていたらどうなるでしょうか。この場合、大盛から特大に進むにはさらに100円の負担が必要になり、多くのお客様は「大盛で十分」と考えて、真ん中で注文が止まってしまいます。
価格差を”埋める”だけで起きる変化
今回の事例では、大盛1,100円に対して特大はわずか+50円の1,150円に設定されていました。「あと50円出せば量が増える」となれば、多くのお客様は「それなら特大でいいか」と考えます。つまり、本当に売りたい価格を最上位(松)に据え、そこからわずかな差でワンランク下(竹)を設定することで、注文が自然と上位メニューに流れる仕組みです。これはラーメンの量に限った話ではなく、「チャーシュー3枚増しセット」のような付加価値メニューでも同様に応用できます。
価格設計の考え方
「安い→高い」に均等に値幅をつけるのではなく、本当に売りたいプランと、その一段階下のプランの価格差を意図的に小さくするのがポイントです。逆に、真ん中と一番安いプランの間にはある程度の差を残しておくことで、松への誘導がより自然になります。
あなたのお店でも使える松竹梅設計ステップ
この考え方は、業種を問わず応用できます。以下の4ステップで、自店のメニューや価格表を見直してみましょう。
「本当に売りたいプラン」を決める
まず、利益率が高い、または在庫回転を促したい商品・プランを1つ決めます。これが最終的に「松」となる価格帯です。
真ん中(竹)との価格差を小さくする
松と竹の価格差を、目安として竹の価格の5〜10%程度に抑えます。「あと少しで上のプランに手が届く」と感じてもらうことが目的です。
一番安いプラン(梅)とは差をつける
梅と竹の間にはある程度の差を残し、「梅は少し物足りない」と感じてもらうことで、竹・松への誘導につなげます。
メニュー表・POPでの見せ方を整える
価格差を数字だけでなく、「+50円で特大」のように差額を強調して表示すると、お客様がその場で比較しやすくなります。
業種別・松竹梅戦略の応用アイデア
この考え方は飲食店に限りません。中小企業のさまざまな業種で応用できます。
美容室・理容室の場合
「カット」「カット+トリートメント」「カット+トリートメント+ヘッドスパ」のようなコース設計で、上位2コースの価格差を小さくすることで、最上位コースへの誘導が期待できます。
士業・コンサルティング業の場合
「基本相談プラン」「標準プラン」「フルサポートプラン」のように顧問契約や相談プランを松竹梅に分け、標準プランとフルサポートプランの差額を抑えることで、フルサポートプランを選んでもらいやすくなります。
小売店・中古品販売店の場合
例えば5万円の商品なら、単品販売、単品+簡易保証、単品+延長保証というように、保証やアフターサービスをオプションとして重ねる松竹梅設計も有効です。
導入時の注意点
原価とのバランスを必ず確認する
松への誘導を優先するあまり、価格差を縮めすぎて松プランの利益率が下がってしまっては本末転倒です。価格を決める前に、必ず原価と利益率を確認しましょう。
「梅」を魅力のないプランにしすぎない
梅プランを極端に貧弱にすると、お店全体の印象が悪くなりかねません。梅プランでも一定の満足感は残すことが大切です。
価格変更の際は事前告知を心がける
既存メニューの価格構成を変える場合、常連のお客様に唐突な印象を与えないよう、店内掲示やSNSなどで理由とあわせて伝えることをおすすめします。
客単価の上げ方には、注文数を増やす方法と、メニュー単価そのものを高める方法の2つの視点があります。中小企業ビジネス支援サイトJ-Net21でも、提案力を高めて注文数を増やす工夫や、旬の商品を提案する切り口が紹介されており、松竹梅戦略とあわせて取り組むことで、より効果的な客単価アップが期待できます。また、同サイトの客単価向上に関する解説記事では、品揃えやPOP、ディスプレイの工夫による客単価向上の視点も紹介されています。
まとめ
- 松竹梅の法則では、多くのお客様が「真ん中」を選びやすい
- 最上位プランと真ん中プランの価格差を縮めることで、上位プランへの誘導が起きる
- 売りたい価格を最上位に据え、そこから価格設計を逆算するのが基本の考え方
- この手法は飲食店に限らず、美容室・士業・小売店など幅広い業種で応用できる
- 導入時は原価とのバランス、梅プランの満足感、価格変更時の告知に注意する






